よく見て、書いて、交渉する、の難しさ

こんにちは。cotakaです。

さあ、何を書こうかと考えていると、ふと学生時代のことを思い出しました。

学生だけじゃやだ。そうだ。お芝居をやろう。

僕は大学生の頃、ただの大学生だけやっているのがつまらないと思って(この辺の性格はブログを始めた現在とあまり変わりません)、当時札幌に住んでいたのですが、社会人の人たちと劇団を作り、そこで脚本と演出(と役者)を担当していました。

2足のわらじ、というのとはちょっと違う気がします。当時、大学の友人は、僕が札幌で劇団をやってることをほとんど知らなかったし、劇団の人たちも僕が大学で何を学んでいるかをほとんど知りませんでした。だから、公演時にも積極的に友人は呼びませんでした。

このブログでも同じようにしています。2足のわらじ、3足のわらじじゃなくて、2人目の人生、3人目の人生をたった1度の人生で生きてみたいんです。

んで!強引に話を戻しますが、劇団を作ったのは、高校生の頃から小劇場と呼ばれる世界に夢中になり、役者をやりたくて劇団をつくったというのが本当のところだったのですが、人生っちゅうもんはそうすんなりと行かないこともあって、脚本と演出がメインの仕事となってしまいました。

(注 もし読者にそういう仕事のプロの方がいたら、ただの思い出話なので怒らないでくださいね。)

まあ、自分に1本だけ脚本の構想があって、その簡略版を人に読んでもらって「こんなのやりたいんだけど、どうですか?(結成当初、相手は社会人ですからほとんど年上でした)」とききながら人集めをしていましたからね。その後も脚本担当になって、脚本の内容を一番わかっているのは脚本を書いた人なので、演出もすることになったというのも、今思えばしょうがない気がします。

運良く人が集まったので、週3回(水・土は3時間、日曜日は4時間だったかなぁ)の稽古を開始しました。基本は発声、体の動かし方などの基礎練習。演出はそのメニューや指導も行います。基礎練習はとても大切ですが、1年中、毎週3日会っていると、その役者さんたちのいろいろな面、表情や仕草、普段の話し方などがどんどん見えてきます。実は脚本・演出を兼ねている自分にはそっちの方が大事なことでした。それはあとで詳しく書きます。

脚本はすべて書き直し

勧誘に使った脚本は構想自体は基本そのままでしたが、役者さんに合わせて、全部書き直しました。僕は役者さんが決まってから、ちゃんと本番用の脚本を書き始めようと思っていたのでこれは想定内でした。

僕は書き始めこそわりとこういうシーンを作りたい、こういう配置に人を置きたい、こういう照明で、このセリフはこういう感じで言ってもらいたい。とかイメージを考えて脚本を書き始めていたのですが、本番用脚本はそうは簡単にはかけません。

役者さんの本質から少しでもずれたセリフを言わせると、ダメなんです。文字は合っていても、言えてないんですよ。役者さんの体の動きのクセ(明らかな動きのクセは稽古で直せるのですが、ただ立っているとか歩くとか、しゃべるときに瞬きが増えるとかは直しづらい)というか、ふるまい方とずれると動けないんです。

役じゃないですよ、役者さんをやっている人。その人自身とずれたセリフや動きや感情表現は、心がついてこないんです。もちろん脚本を書くときは役者さんがのことを想像して書くのですが、実際の稽古場でやってみると違うなぁと思うときもしばしば。だから、せっかく書いた脚本部分をほとんど書き直しってこともよくありました。だから、いつも台本完成は公演前3日くらい。あの時はご迷惑をかけました。

これは脚本家としての僕の力不足ももちろんあったのでしょうが、その他にも書き言葉と話し言葉の違い(というかタイピングスピード。激しいシーンはめちゃくちゃセリフスピードが速くなります。僕は話し言葉でセリフを書くために、部屋で一人セリフを喋りながら台本を書くのですが、タイピングスピード遅れてくると書いたセリフがシーンに絶対合わなくなります。不思議。)と、これが一番大事でかつ大変なこと。

それはですね。僕が書く脚本は、その役者さんの役柄以前に、普段の人間的な部分(魅力といってもいいです)に合わせて書く方法だったことに関係があります。

「この役のこのセリフは、あなたの中に普段は隠しているあの感情で言ってください」

というようなものですから、役者さんにしてみれば拒絶してくることもあるのです。だから普段隠してるんだもんね。自分でその隠している部分に気付いていない場合もあります。

でもこっちは1年中、週3回、休憩時間も、稽古後の食事の時も本当に気を抜かないで見ているのです。舞台稽古でセリフがない時にどうしているか、出番がないシーンで舞台の脇に避けている時の表情まで横目で見てますから視野が広がるったらありゃしない。で、その観察の結果、その役者さんの中にそのセリフを言える感情があると確信しているのです。

 

役者さんとのぶつかり合い(というか交渉)

こっちはいい作品を作りたいので、その感情を出させたい。役者さんは出したくない。普段の人間観察と、こういう状況からどのように感情を出すように交渉していくかが演出の仕事の本質だったと思います。

交渉の仕方、説得の仕方、これも役者さんの性格によって全然違います。ある役者さんにはうまくいく方法が、他の役者さんに全く響かないなんてザラですよ。まさに役者さんの数だけ、その時のコンディションの数だけやり方がありました。上からの圧力でいうことを聞かせるって方法はまずダメですね。頑なになった役者さんによって、そのシーン全カットという状況になるだけです。

この大変さを「芝居のことなんて知らないよ。演出のことなんてもっと知らないよ。」という方に分かりやすいかなぁと思ってよく使っていた実例をあげます。ある時、うちの劇団内でなんとなく血液型の話になりました。当時15人くらいだったと思います。

結果、A型1人、O型2人、その他13人、すべてB型かAB型。

「この集団をまとめて、説得、交渉するんですよ。」これで大体言いたいことが伝わりました。だいたいみなさん、すごい嫌そうな顔をしますね。僕でさえこの結果を聞いた時めまいを覚えましたもん。公演を重ねるごとにすこしずつ慣れては行きましたけどね。

そして、今

ただ、この時の経験で人間観察力と、説得の仕方、視野の広さはかなり鍛えられた気がします。あれから15年くらい経ちましたが、人間観察力とその人に合わせた説得の仕方は今も役にたっていると思います。デメリットとしては、無意識に人のことをどんな人か観察するようになってしまったことですかね。

視野の広さのメリット?え〜とね。飲み会とかの席で、誰かが料理落とした、とかはかなり遠い位置にいても気づきます。本人よりも速く。そのくらいしか役に立たねえ。

 

あぁそうだ。お話の作り方なんかも書くかもしれません。でも、また今度。

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cotaka

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生まれてから20年は千葉、その次の20年は札幌に住んでいました。そして2年前からは埼玉に。 読書が子どもの頃からとても好きで、本を読めない時間が続くとちょっとそわそわします。 他には、星野源さんの創り出すもの、満島ひかりさんや高橋一生さんの演技、美味しいものとコーヒーが大好きです。詳しいプロフィールはこちら

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