うつヌケ  田中圭一

こんばんは。cotakaです。

さて、書評です。

 

実はこの本の書評が一番書きたかったのです。

でも書評を書くのを一番迷ったのです。

散々迷って、迷って、迷いまくってやっぱり書こう。と思いました。

 

なぜ、そんなに迷ったのか?理由は簡単。

僕が「うつ」だからです。しかも5年前から。

 

実は2月の終わりから3月の終わりまでまるまる1ヶ月休職し、入院していました。

入院した理由は精神的に倒れたからです。そして幸いなことに職場が休職に理解があったからです。

この本の書評をなかなか書けなかったのはその事実を公表するのがこわかったからです。

 

この本には入院中に出会いました。

入院といっても、休養施設のようなところで、申告さえすれば病院の出入りは自由だったので、「ちょっと気分転換も兼ねて駅前に行ってみよう。だいぶ休んだし」と軽い気分で病院の送迎バスに15分乗って駅前に行き、偶然本屋さんで見つけてすこしでも助けになればと思い、購入しました。

入院してから10日あまりが過ぎていたので、施設の環境にも慣れ、大丈夫だと思ったのです。

そして、その買い物に出た時、初めて「自分は病気だ」と本当の意味で自覚したのです。

本を購入する時も、レジで言葉が出てこないのです。歩くのもやっとなんです、施設では普通に歩けてたのに。

ただ黙って本を出し、一生懸命お金を出して支払いをし、施設の送迎バスを心待ちにして、施設に戻った時に「助かった」と思いました。

なんてことはない。それまでは具合が悪すぎて、自分が病気だと自覚できなかっただけなんです。

自分以外の人が普通に歩いている駅の前でただバスを待っている間、恐怖と疎外感しか感じませんでした。あの感覚は今も忘れることができません。

幸い今は仕事は順調にできていますし、こうしてブログを書くこともできています。でも、いつまた悪化するか、それともこのまま順調に回復していくのかは誰にもわかりません。

入院中に受けた心理カウンセリングでやりたいことを答えるものがありました。困りました。僕には趣味の読書以外、人生においてやりたいことがなかったのです。

丸々2日考えて、早く病気を治して家族を安心させたい。そしていつか世の中の同じように苦しんでいる人たちのために、なにかしたいという考えが浮かんできました。自分でも他人のためになにかをしたいなどと考えたことはとても意外でしたが、心に浮かんできた時、「これだ!」と思いました。不思議なものです。ボランティアでさえ興味がなかったのに。

退院後、こんなに早くブログを始めたのは偶然です。周囲にはまだ早すぎるのでは?ちゃんと病気が安定してからでもいいのでは?と止められたのも事実です。でもまたいつか悪くなれば、なんにもできなくなるのです。やれることはやれるうちにしたかった。冗談ではなく、ここでブログを始める機会に出会ったのは、神様のおぼしめし。と思いました。

僕がブログを始めたのが5月18日から。
ブログは自分に合っていたようで、毎日楽しく書いています。自分が書くのが好きなのも初めて知りました。本当に良かった。

この本には数多くの人たちがどうしてうつになり、どうやってぬけて来たか。という体験談を語っています。著者の田中圭一さんのことは以前から知っていましたが、マンガの作風からまさかうつだったとは思ったこともありませんでした。

そして、僕は入院中この本の登場人物の方々に、共感し、助けてもらいました。マンガだから読むことができたのも大きいと思います。このころは活字も読めるようにはなっていましたが、やはりマンガの方が気楽で、けして厚い本ではないのですが、もったいなくて少しずつ読みました。

登場人物の方々の語る体験談は、僕にはとてもよくわかりました。僕だけではなかった。あれは病気だからだったんだ。と勇気付けられました。

一度うつになった人と、うつになりかけたことがあるけどギリギリ間に合った人との間には大きな違いがあります。「うつスイッチ」が体にできるからです。本の中で「うつスイッチ」が出てきた時にはおもわず「そう!そうなんだよ!」と声が出ました。

心配してくれている人や、たくさんのご迷惑をかけてしまった人、一生懸命支えてくれている人、本当に心から感謝しています。

ですが、やはりうつには、なった人にしかわからないことが確かにあると思います。

倒れる直前は疲れは感じません。

もうずっと頑張ってます。

なにを言われても理解できません。

なにを読んでも頭にはいりません。

昨日できていたことが今日はできません。

好きなことはできるのではなく、できるからうれしいのです。

どんなにフォローされても、自分のことが大嫌いです。

理由を聞かれてもわかりません。

倒れてしまえば、本当に指1本動かすことさえ面倒です。

感情はどこかに行ってしまいます。

家の階段を一段上がるのと、駅のホームから一歩出ることに差は感じません。

味はなにも感じません。食べなくても別に構いません。

うつは心の風邪というのは受診する敷居を下げるため、実際には心のガン。ほっとけば命に関わります。

受診できた人は幸運です。

なにをして欲しいのかもわかりません。

単なる甘えでなれるような病気ではありません。

いろいろな症状や段階がありますので、もちろんこれらが全てではありませんが、僕が実際に病気になって、いくつか経験したことが入っています。僕がなにもわかっていなかったと理解できたのも、実際に病気になったからです。

僕の病気を知った人の中には、心ない(と感じた)言葉を投げかけた人もいました。それでも、あんなに辛い病気になる人が少しでも減ることを心から願います。

僕がcotakaというペンネームを使って違う人生も生きたいと思っているのは病気のない人生を歩きたいためでもあります。僕がcotakaでいるかぎりお気遣い無用です。でもそのお気持ち、ありがとうございます。

今回のことは書く前に、物凄い葛藤がありました。ブログ開設時から、もうこの書評のことは考え始めていましたから。

それでも書こうと思ったのは、知人の女性が何回もうつになっていたことを最近知ったからです。いつも笑顔で精力的に活動する彼女にそんな過去があったなんて全く知りませんでした。そして彼女はそんな過去をペロッと教えてくれたのです。本当にペロッて感じで。

彼女にはブログを書いていることを伝えていますから、もしかしたらこの文章を読むかもしれません。ここでお礼を言わせていただきます。ありがとうございました。私はあなたに勇気をもらいました。

そして、もし同じ病気で苦しんでいる人でこの小さなブログをたまたま見つけた方がいたら。僕はあなたの力にはなれないけど、心から応援しています。今この文章読んでるんでしょう?大丈夫。今は生きてる。とりあえずこの本を明日読んでみよう。ペラペラめくるだけでもいいから。

 

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cotaka

cotaka

生まれてから20年は千葉、その次の20年は札幌に住んでいました。そして2年前からは埼玉に。 読書が子どもの頃からとても好きで、本を読めない時間が続くとちょっとそわそわします。 他には、星野源さんの創り出すもの、満島ひかりさんや高橋一生さんの演技、美味しいものとコーヒーが大好きです。詳しいプロフィールはこちら

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